TV.実践女子学園
実践女子学園TV講座のインターネット配信がはじまりました。従来はケーブルテレビを通した配信のみでしたが、これからは地域を問わずご覧いただけます。
絵画の保存と修復(1)
( 平成21年4〜5月放送 ※肩書・所属は放送時のものです)
Part2(後編)をみる
講師:作間美智子(実践女子大学文学部美学美術史学科講師)
油絵の構造
油絵は主に4層の層構造になっている。
絵を描く土台になる、紙や板、布の支持体。
支持体の上にある白い塗料などが塗ってある地塗り層。
絵の具が塗ってある絵の具層。油絵の場合は絵の具が何回も塗られているので絵の具層自体も層構造になっている。
一番上の層は描きあがってからしばらく経ってから画面保護のためにワニスなどが塗られるワニス層。作品によっては塗られない場合もある。
肉眼観察と状態調査書作成
油絵の工学調査
X線写真観察
左は肉眼、右はX線を用いて作品を観察したものである。
油絵の場合は鉛白を主成分にした白い絵の具がよく用いられる。
鉛白は重たい元素であるのでX戦で観察すると画面のように絵の具を使っているところが白く見える。
赤外線観察
赤外線は炭素が含まれているものを映し出す。
石炭や鉛筆等に含まれているので肉眼では分からない下書きの線などが分かる。
紫外線蛍光写真観察
紫外線の蛍光ランプを照らして観察する。
表面にワニスが塗られていると画面が白くぼやけてワニスが塗られていることが分かる。
黒い斑点などが見える場合はそこの部分が補彩されていたことを表し、以前に修復されていたことが分かる。
蛍光X線分析
X線を当てて返ってきた各元素固有の反応を見てその元素を使っている絵の具を特定する事ができる。
クロスセクション観察
1ミリ以下くらいの小さな範囲を採取し断面を観察する。
これをX線解析などにかけて直接元素を特定する。
状態調査表
絵を見て肉眼で観察して調査書に書き入れる。
サイズの調査
画面が歪んでいる場合は四辺を測る。
亀裂などある場合、言葉は同じ絵の中で統一する。
紫外線蛍光写真観察
画面全体にぼやっと白いもよもやとした煙が見えているときはワニスがあることを示している。
一枚上に透明な枠があると修復するときカビや汚れの洗浄がしやすい。
ワニス自体も樹脂なので黄色くなったりするが、ワニスを取りまた塗りなおせば下の絵の具の保護になる。
絵画の保存と修復(2)
乾燥亀裂
下から上に相を重ねていくときに油の量を徐々に増やしていくのが油絵の原則であるが、たまたま下に塗った油の方が多く、上の層が先に乾いてしまうことがある。
乾くときに油は容積が増えるために絵の具は膨らむ。このような時、上の層が固まっているので亀裂が発生する。
突き傷
外側から物理的な力が加わってできる圧縮されてしまう場合がある。
布による傷
キャンバスの角のところの布が緩んで木枠に直に布があたってしまったためにできる。
観察
布の張り
絵によっては布の張りが弱くなっているものでグラグラしてしまうものもある。
そのような絵を持ち上げるときには特に注意が必要である。
チョーキング
絵の具が艶を失って粉っぽくなっている状態を言う。
1960年代にチューブから出された絵の具で描かれた絵を調査したとき、青色だけチョーキングを起こしていた。赤色や他の色はチョーキングを起こしていなかったので、青色に使われいるコバルトのように顔料によってチョーキングを起こしやすいものもある。
戻り
絵の具が一度乾いて固まっているものがまた溶け出してくる現象。
大量の絵の具を使う作品に見られることがある。
布の織り・綾織り
平織りは一本一本織っているものである。綾織りは斜めの筋が見えているもの。日本では平織りが多いが、イタリア等はわりと綾織りが使われている。
『花』経糸×200
『花』の経糸を顕微鏡で200倍で見たもの。
観察しやすいように染色液につけた。
麻の場合には節があるので亜麻糸であることを確実に判断するには糸を顕微鏡で拡大し節を確認する。
『花』緯糸×200
こちらにも節があるので亜麻糸であることが分かる。
『犬』経糸×200
よれっとしていて節が見られない。このような場合は綿である。
『船』経糸×200
この場合、『花』と同じように節があるので亜麻糸であることが分かる。
糸が取れない場合は肉眼で判断しなくてはいけない。麻だと思ってもはっきり分からなかった場合は麻類と調査票には記しておく。
糸の織りの計測
描きたい作品により織りの荒さが違う場合が多い。
状態調査表の重要さ
状態調査表を作るのは保存や修復をするための第一歩である。
これがカルテとなって、修復の計画を立てる。修復をしない場合でも展示が可能であるかなどの判断を行う時に必要である。
絵というものは50年、100年経てば痛んでくるので必ず修復が必要になる。
記録をとることは、現在どのような状態であり、どのような修復が行われたかを次の世代に伝え、文化財を残していくためにも必要である。
記録をとることは修復と同じように重要な事である。
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